日本では80歳までに3人に1人が発症するといわれる帯状庖疹。特に50歳ごろから、発症する人が急増します。
また高齢になるほど、神経痛が長く残る人が多くなります。神経痛を残さないためにも、発症を予防し、重症化を防ぐことが大切です。
鼻や耳、目周辺に発疹が現れることも
多くの人は子どものころ、水ぼうそうにかかったことがあるのではないでしょうか。実は、帯状庖疹の原因は水ぼうそうと同じウイルスです。
水ぼうそうは多くの場合、1週間程度で治まりますが、体内から水ぼうそうのウイルスがいなくなったわけではなく、神経の根元の神経節というところに潜んでいます。加齢や疲労、ストレスなどで免疫機能が低下すると、そのウイルスが再活性化、神経に沿って移動し、痛みや発疹が現れる帯状庖疹を発症します。
症状は、体幹の左右どちらか片側にチクチク、ピリピリした痛みが生じた後、その部位に水ぶくれを伴う赤い発疹ができることが多いのですが、神経は全身に張り巡らされているため、他の部位に現れることもあります。例えば、顔にある三叉神経などの神経節にウイルスが潜伏し再活性化した場合には、頬やひたい、鼻、耳の周辺などに発疹ができます。さらに、頭痛やめまいなどの症状を伴うこともあります。特に目の周辺に症状が現れた場合は、角膜炎や結膜炎、視力低下などを引き起こすことがあるので、速やかに眼科を受診してください。
50歳以上の患者さんの約2割は強い痛みが続く
帯状庖疹の治療の中心は、ウイルスの増殖を抑える抗ウイルス薬の投与です。また、症状に応じて痛みを抑える鎮痛薬や、炎症を和らげる軟膏などが用いられます。
帯状庖疹のほとんどは早めに治療を始めると完治しますが、ウイルスにより神経が傷つき変性してしまうと、眠れないほどの激痛が長く残る帯状庖疹後神経痛(PHN)という後遺症が出ることがあります。50歳以上で帯状庖疹を発症した人の約2割がPHNになるという報告もあるので、注意が必要です。PHNでは、薬物療法のほか、場合によっては痛む部位の神経やその周囲に局所麻酔薬を注射する神経ブロック注射が行われることもあります。
PHNの痛みは長く続くこともあるので、痛みと上手に付き合う工夫も大切です。特におすすめは体を温めることです。入浴はシャワーで済まさずに、湯船にゆったり浸かると痛みは、軽減しやすくなります。
発症や症状悪化の防止に有効なワクチン接種
こうした後遺症を避けるためには、日ごろから栄養バランスのとれた食事や適度な運動、良質の睡眠など、免疫機能を低下させないように努めることが大切です。また、50歳以上の人は予防接種を受ける選択肢もあります。発症を完全に防げるわけではありませんが、万一発症しても重症化を防ぐことができるとされています。
予防接種に用いられるワクチンは現在2種類あり、それぞれに予防効果や費用が異なります。また、接種費用の一部を助成している自治体もあります。医師や薬剤師に相談するとよいでしょう。
なお、帯状庖疹についてわからないことは薬局の薬剤師に気軽にご相談ください。